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「こんなに楽をしていいのか」。そう思ったのは、これで2回目です。1回目はミックスで、2回目は今、動画編集でです。
昔:スカスカのミックス
ミックスを始めた頃の私は、本当にスカスカの音しか作れませんでした。音は鳴っているし、バランスもそれなりに取ったつもりなのに、市販の曲と並べると、明らかに中身が薄い。何が足りないのかも分かっていませんでした。
転機:Neutron 2のAI
流れが大きく変わったのは、iZotopeのNeutron 2を使い始めたときです。Neutronには、AIがトラックの音を分析して、EQやコンプの設定を自動で組んでくれる機能があります。
初めてそれを使ったとき、スカスカだったミックスが一気にちゃんとした音になりました。ボタンを押して少し待っただけです。正直なところ、こんなに楽をしていいのかと、少し疑わしく思ったのを覚えています。
AIの設定を、答えとして読む
ただ、そこで終わりにはしませんでした。
AIが組んだ設定には、どの帯域をどれだけ削ったか、どこをどれだけ持ち上げたかが、全部数字で残っています。私はそれを、自分のミックスに足りなかったものの答えとして読むことにしました。なぜここを削ったのか。なぜこのくらい圧縮したのか。
そこから、参考にしている市販の曲と自分のミックスを並べて、音質の違いを1つずつ突き詰めていきました。AIの設定をヒントに、残りの差を自分の耳で埋めていく。その繰り返しで、売り物にできるレベルの音を作れるようになりました。
AIは、私の代わりにミックスをしてくれたわけではありませんでした。スカスカの理由を、数字で見せてくれた先生に近かったのだと思います。
今:動画編集でも同じことが起きている
今、同じことが動画編集で起きています。AIで動画編集ができるようになって、またしても、こんなに楽をしていいのかと思っています。
ミックスでは、AIによる自動設定はもう当たり前の道具になりました。使っていることを特別に言う人も、ほとんどいません。動画編集も、そのうち同じように当たり前になるのだろうと思います。
余談:疑わしさは、慣れると消える
2回目だから分かることがあります。「こんなに楽をしていいのか」という疑わしさは、技術がまだ当たり前になっていない時期にだけ感じるものです。
Neutron 2のときに感じた疑わしさは、今の私にはもうありません。ミックスでAIを使うことに、何の後ろめたさもない。だとすれば、動画編集で今感じている疑わしさも、数年後には消えているはずです。
楽をしていい、という結論
10年近くかけて私がたどり着いたのは、楽をしていい、という結論です。
ただし、条件があります。AIが出した答えを、そのまま受け取って終わりにしないことです。なぜその答えになったのかを読めば、楽をした分だけ、自分の耳と手が育ちます。スカスカのミックスしか作れなかった私が、売り物になる音を作れるようになったのは、楽をしたからではなく、楽をして浮いた時間で、その答えを読んだからでした。


