映画を観ながら「原作のほうが面白いんだろうな」と想像してしまう。星新一を1話ずつ読んで気づいた、短い物語の強さ

映画を観ながら「原作のほうが面白いんだろうな」と想像してしまう。星新一を1話ずつ読んで気づいた、短い物語の強さ

読了目安:約6分

原作がある映画やドラマを観ていると、「これ、原作のほうが面白いんだろうな」と想像してしまうことはありませんか。私はよくあります。小松左京の『日本沈没』は、まだ小栗旬さん主演のドラマ版しか観ていないのに、そう思っています。

『時をかける少女』もそうでした。原作があると知ってからアニメ映画を観たので、最後のほうはずっと「原作のほうが絶対面白いんだろうな」と想像しながら観ていました。

今回は、なぜそう思ってしまうのか。そして最近、星新一のショートショートを読んで気づいたことの話です。

目次

先に原作を読んでいた『夏への扉』

ロバート・A・ハインラインの『夏への扉』は、先に原作を読んでいました。そのあとで、山﨑賢人さん主演の映画を観ています。

観終わって最初に思ったのは、ピートの解釈は絶対に違っただろう、ということでした。

ただ、同時に納得もしました。日本の映画で、ちょっとしたSFを入れて作るとなったら、あの規模になるよな、と。日本の市場に向けた作品としては、あれで成功と言えるのだと思います。

そして不思議なことに、映画を観たことで、原作の面白さがよりはっきり分かりました。映画で変えられたところを見ると、原作がどこで勝負していたのかが浮かび上がってくるんです。

ちなみに、山下智久さん主演のドラマ版『アルジャーノンに花束を』もあるそうですが、これは観るのを少しやめています。原作が好きすぎて。

原作のほうが面白く感じる構造

なぜ「原作のほうが面白いんだろうな」と思ってしまうのか。理由は、小説と映像の作られ方の違いにあると思っています。

ひとつは、予算の上限です。小説では、日本列島が沈むのも、600年後の未来も、文字だけで書けます。かかる費用は、映像とは比べものになりません。映像にするときは、予算の中に収まる形に作り直す必要があります。『夏への扉』の映画に感じた「この規模になるよな」は、まさにこれです。

もうひとつは、映像を作る場所の違いです。小説の映像は、読者の頭の中で作られます。一人ひとりが、自分にとって一番いい映像を勝手に思い浮かべている。映像化された作品は、それをたったひとつの形に決めてしまいます。自分の頭の中の映像と違えば、それだけで「違う」と感じます。

そして、映像は観る人に合わせたチューニングが入ります。上映時間、観る人の年代、その時代の空気。『時をかける少女』のアニメ版は、そのチューニングが上手くいった例だと思います。原作の題材だけを受け取って、ほとんど新しい話として作り直していました。

映画も原作も面白い『ツナグ』

逆に、映像化して映画も面白かったのが、辻村深月さんの『ツナグ』です。原作も相当面白いですし、映画も面白い。

これはたぶん、原作がもともと映像にしやすい物語だからだと思います。一生に一度だけ、亡くなった人に会わせてくれる「使者(ツナグ)」の話で、依頼人ごとに話が進んでいく連作の形になっています。一つひとつの話が、人が会って、話をして、別れるという、映像にしやすい場面でできています。

映像にしやすい物語で、映像としても面白くでき、そもそも原作自体がかなり面白い。すごくいい話なんだなと思います。

今、続編の『ツナグ 想い人の心得』を、文庫で積んでいます。

星新一で、初めて短編の良さが分かった

最近いちばん興奮しているのが、星新一のショートショートです。新潮文庫の『ボッコちゃん』を、毎日ちょっとずつ、1話くらいずつ、娯楽として読んでいます。今、半分くらいまで来ました。

相当面白いです。

これまで、短編を食わず嫌いしていたわけではないのですが、ちゃんと触れたことはありませんでした。今回初めて、「短いから、この作品はこんなにいいんだ」と分かりました。

ショートショートは、数ページで始まって、ひっくり返って、終わります。説明を足す余白がないので、一文一文に役割があります。設定を一行で立てて、最後の一行で意味を反転させる。長編なら何十ページもかけて積み上げるものを、数ページで同じくらいの驚きにして渡してくる。

短さは、足りないことではありません。削りきった結果だから、強いのだと思います。

毎日ブログを書いていたから、分かったのかもしれない

短編の良さに気づけたのは、自分で文章を書くようになったからかもしれません。

今、このブログをほぼ毎日更新しています。自分で書く側に回ったことが、星新一の数ページにどれだけのものが詰まっているかを感じ取る材料になったのだと思います。

毎日ブログを書く作業も、無駄じゃなかったなと思いました。

余談:日本三大SF作家で、残るは小松左京

星新一、小松左京、筒井康隆は、日本三大SF作家と呼ばれています。筒井康隆は『時をかける少女』『旅のラゴス』を読みました。星新一は今読んでいます。残るは小松左京です。次は『日本沈没』を読みたいと思っています。

ドラマ版を観たときに「原作のほうが面白いんだろうな」と想像したのが、本当に当たっているのか。それを確かめるのが、今から少し楽しみです。

ちなみに今は、朝井リョウさんの『何者』を読んでいます。直木賞の作品です。SFではないので、今回の話とはまったく関係ありません。

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