自分の歌は「Melodyneで直したあと」を想像しながら録っている。歌いながら3回、歌い終えて1回確認して、その場でOKテイクを決める

自分の歌は「Melodyneで直したあと」を想像しながら録っている。歌いながら3回、歌い終えて1回確認して、その場でOKテイクを決める

読了目安:約5分

自分の歌を録るとき、私は歌っている最中に3つのことを同時に確認しています。喉の感じ、耳に直接入ってくる生の声、ヘッドホンから返ってくるマイクの声です。歌い終わってからもう一度聴いて、その場でOKテイクを決めます。

私はミックスやボーカルの編集をする側でもあり、自分で歌うボーカリストでもあります。自分で歌うときと、人の歌をミックスするとき。同じボーカルでも、扱い方はまったく違います。今回は、その違いの話です。

目次

歌いながら3回、歌い終えて1回

自分の歌を録るときは、片耳だけヘッドホンをしています。

歌いながら確認しているのは、次の3つです。

1. 自分が歌っている喉の感じ
2. ヘッドホンをしていない側の耳から入ってくる、生の声
3. ヘッドホンから返ってくる、マイクを通った自分の声

歌い終わったら、両耳でヘッドホンをして、Studio Oneの上で一通り聴きます。これで4回目の確認です。

この時点で、使えるか使えないかは、もう分かります。

「ここ一箇所ミスったな」と思ったら、そこを差し替えられるかを考えます。Melodyneで修正してみて、大丈夫ならOKテイク。録り直すのは、Melodyneで直せないときだけです。

直したあとの声が、先に見えている

自分の歌だとこれだけ速く判断できるのは、編集も自分でやるからです。

私は録ったあと、Melodyneでピッチとタイミングを直します。そのとき、直したら自分の声がどれくらい変わってしまうか。これが、完璧にイメージできています。

だから、歌っている時点で、仕上がりまで予想しながら歌っています。

たぶん少し特殊な歌い方になっていると思います。自分が作りたい音のイメージに、その場で一番近い歌い方をしているわけではありません。自分の歌の持ち味を、自分の編集で一番料理しやすい状態で歌っている。そういう感覚です。

人の歌は、その人の判断軸で選ばれている

人の歌をミックスするときは、ここが大きく違います。

送られてくるのは、たぶん、その人がその場で一番うまく録れたと思ったテイクです。その人自身の判断軸で選んだ、一番いいテイク。それ自体は、まったく正しいことです。

ただ、Melodyneで直すことになったときには、適切ではない歌い方になっていることがあります。

これには構造的な理由があります。Melodyneのようなピッチ補正は、まず録音された声から「この音はこの高さ」と音程を読み取って、それを動かします。音程がはっきりしている声ほど、読み取りやすく、動かしても自然です。

逆に、しゃくりやフォールが大きかったり、息の成分が多かったり、音と音の間がなめらかにつながりすぎていたりすると、どこからどこまでが一つの音なのかが読み取りにくくなります。生で聴くと表情豊かでいい歌でも、補正しようとすると、つなぎ目が不自然になったり、声の質感が変わったりしやすい。

また、ピッチ補正の記事でも書いたように、大きく動かすほど声のキャラクターは変わっていきます。もともとのズレが大きいテイクほど、直したあとの声が自分の声から離れていきます。

その場で一番うまく歌えたテイクと、編集しやすいテイクは、必ずしも同じではありません。私が自分の歌で後者を選べるのは、たまたま編集する側も兼ねているからです。

本番の前に、相当練習している

もうひとつ、自分の歌のときに速い理由があります。練習です。

仮歌のときは、曲を作りながらその場で録ってしまいます。でも本番のレコーディングの前には、かなり練習してから臨みます。普段から、歌の練習も欠かさないようにしています。

練習しておけば、録るときに迷うことが減ります。迷いが減れば、確認に集中できます。4回の確認でOKかどうかを決められるのは、その前の練習があるからです。

余談:歌い手さんに伝えるなら

もし歌い手さんに一つだけ伝えるとしたら、「一番うまく歌えたテイク」と「直しやすいテイク」は違うことがある、ということかもしれません。

もちろん、MIXエンジニアのために歌い方を変える必要はありません。歌い手さんの一番いい表情を、そのまま届けてもらうのが一番です。ただ、どのテイクにしようか迷ったときに、「こっちのほうが音程がはっきりしているな」という視点が一つあると、仕上がりが変わることがあります。

MIX依頼の言葉の選び方とあわせて、何かの参考になればうれしいです。

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