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歌ってみたのMIXを依頼するとき、参考曲を何曲も送る方がいます。イメージを正確に伝えたいという気持ちの表れなのですが、実はエンジニアにとっては、参考曲は1曲の方がずっと助かります。
MIX師として依頼を受けてきた立場から、依頼のときに渡していただくと仕上がりが良くなる情報を2つ紹介します。参考曲の渡し方と、録音に使った機材の伝え方です。全3回の「歌ってみたMIX依頼ガイド」の2回目で、1回目では伝わる言葉の選び方を書きました。
参考曲は1曲がいちばん
参考曲は、1曲が最高です。
曲のセクションごとにこだわりがある場合は、複数曲あっても構いません。たとえば、Aメロはこの曲、サビはこの曲、という形です。ただしその場合も、1つのセクションにつき1曲がベストです。
プロの耳は「だいたい同じ」を同じと聴けない
なぜ1曲がいいのか。理由は、プロの耳の性質にあります。
依頼する方は、同じような音質だと思って、似た曲を2つ3つ選んで送ってくださいます。ところが、エンジニアの耳には、その曲たちの音質の違いがはっきり聞こえてしまいます。ボーカルの近さ、高音の明るさ、リバーブの長さ。素人の耳には同じに聞こえる違いを、同じものとして聴くことができないのです。
たとえば、サビの参考として3曲が届いたとします。1曲目は声がすぐ耳元にあって、2曲目は高音がきらきらと明るく、3曲目はリバーブが長く尾を引いている。依頼者の方にとっては「どれも好きな感じの曲」でも、エンジニアには、まったく別の3つの注文に聞こえます。
その結果、「この方が求めているのは、結局どっちなんだろう」と迷うことになります。良かれと思って増やした参考曲が、かえってイメージをぼやけさせてしまうわけです。
2曲の「間」なら、比率で伝える
どうしても2曲の中間のイメージがある場合は、それをはっきり言葉にしてください。
- 「この2曲のちょうど間くらいです」
- 「Aの曲が3、Bの曲が7くらいで混ざっている感じです」
「3:7」のように比率で伝えていただけると、エンジニアはどちらに寄せればいいかが分かり、とても助かります。2曲を並べて送るだけだと迷いが生まれますが、比率が添えてあれば、その迷いは消えます。
録音した機材を書き添える
もう1つ、依頼のときに書き添えていただくと助かるのが、録音に使った機材です。
- マイク
- ケーブル
- オーディオインターフェース
- スマホで録ったのか、パソコンで録ったのか
- 録音に使ったソフト
機材が分かると、エンジニアは「この音のクセはマイク由来だな」「このノイズはインターフェース由来かもしれない」と、音の特徴の原因に当たりをつけやすくなります。原因が分かれば、処理の方針も早く決まります。
余談:録り方のコツは、別で調べてほしい
本当は、録り方そのものにもコツがあります。音を割らないこと。マイクに近すぎず、遠すぎないこと。部屋の響きをできるだけ抑えること。ちょうどいい声量で歌うこと。
ただ、これらは慣れていくしかない部分が大きく、ここで少し書いたくらいで身につくものではありません。録り方は、また別の機会にじっくり調べてみてください。
その代わり、機材を書き添えることは、今日からすぐにできます。録り方が未熟でも、何で録ったかが分かれば、エンジニアの側でかなり補えます。
迷わせないことが、いちばんの近道
参考曲は1曲、2曲なら比率で、そして録音機材を添える。どれも、エンジニアを迷わせないための工夫です。
エンジニアが迷う時間が減るほど、その時間は音を良くすることに使われます。依頼の文章を少し整えるだけで、受け取る音源の仕上がりは変わります。


