撮る人と編集する人を分けると、なぜ編集は重くなるのか

撮る人と編集する人を分けると、なぜ編集は重くなるのか

読了目安:約6分

撮影と編集は、分けた方が効率がいい。映像の仕事では、よくそう言われます。私も長いことそう思っていましたし、実際に今、撮影は別の方、編集は私という形で、企業のYouTubeチャンネルを2つ担当しています。

ところが、この編集がとにかく重いのです。1本仕上げるのに、どの工程も同じくらい時間を食います。困ったことに、自分でもなぜこんなに重いのかを、長いあいだ言葉にできずにいました。素材が多いから、と答えるのが精一杯でした。

最近ようやく、その正体が見えてきました。重さの原因は素材の量ではなく、判断の置き場所にありました。

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分業すれば速くなる、は半分しか正しくない

分業が効率的だというのは、作業だけを見れば正しい話です。撮影と編集を別の人が同時に進められれば、全体の日数は縮みます。

ただ、映像の仕事は作業だけでできていません。何を撮り、何を使い、何を捨てるか。その判断の連続でできています。そして分業すると、作業は2人に分かれても、判断はきれいに分かれてくれません。多くの判断が、後ろの工程である編集に流れてきます。理由は、少なくとも3つあると考えています。

理由その1:選ぶ判断が、まるごと編集に回ってくる

担当しているチャンネルの1つは、インタビューが軸です。話しているのは一般の方なので、顔を映し続けても画がもちません。そこで、話の内容に合う映像(インサート)をほぼ全編に当てていきます。

このインサートの素材が、インタビュー素材の最低でも10倍は届きます。1つの発言ごとに、その10倍の山から合うカットを探し、使える部分だけを切り出して当てる。これを最初から最後まで繰り返します。

自分で撮影しているときは、こうはなりません。撮りながら、このカットはあの話の後ろで使う、と覚えておけるからです。念のために撮っておくカットでさえ、撮っているその場で取捨選択しています。つまり、選ぶという判断のかなりの部分は、本来は撮影の現場で終わっているのです。

撮影と編集が分かれると、この判断が素材と一緒に、まるごと編集に届きます。以前、決断疲れについて書きましたが、インサート選びはまさにあの構造です。1つ1つは小さな判断でも、数百回続けば頭は確実に削れます。

理由その2:現場の空気が、素材に写っていない

撮影の現場にいると、依頼者が何をやりたいのか、どんな完成形を思い描いているのかが、会話や表情から自然に伝わってきます。そのまま編集に入れば、完成のイメージは最初から一つにそろっています。

届いた素材だけを見て編集するときは、その情報がありません。映っているのは映像と音だけで、現場の空気は写っていないからです。企画書があれば照らし合わせますが、それでも最後は推測で埋めることになります。推測で組んだものは、確認と修正の往復を生みます。

素材の置き場所も同じです。自分で撮っていれば、どこに何があるかは頭に入っていて、編集前の整理はほとんど要りません。人が撮った素材は、中身を一通り見るところから始まります。

理由その3:変えられない条件が、補修の仕事になる

カメラを何台使うか、音をどう録るか。自分で撮るなら、これはすべて自分で決められます。今の編集で引っかかっている箇所の多くは、撮影の段階でなら防げたものです。

編集からは、もう変えられません。録音の条件が厳しければノイズ除去で補い、画面に出す画像や図表が足りなければ編集の段階で用意します。これらは編集というより、撮影で決まった条件を後から補修する仕事です。

念のために書いておくと、撮影を担当している方が悪いわけではありません。撮り方について相談したこともありますが、限られた予算の中で、今できる最善の撮影をしてくれています。問題は人ではなく、分業という形そのものが、判断を後ろへ流す構造を持っていることです。

余談:一番好きな工程は撮影だった

この話を整理していて気づいたのですが、映像の仕事で私が一番好きなのは撮影です。自分で撮りたいものを撮る時間だけは、はっきり面白いと言えます。

今の2つのチャンネルは、住んでいる地域が撮影地から遠く、交通費を抑えるために撮影は別の方が行っています。合理的な判断です。ただ、好きな工程を手放した代わりに、その工程で片付くはずだった判断を、編集でまとめて引き受けている。そう考えると、編集の重さにも筋が通ります。

重さの正体は、判断の置き場所

長いこと「素材が多いから」だと思っていた重さの正体は、量ではなく、判断の置き場所でした。撮影で下されなかった判断は消えずに、編集に流れてきます。

分業の段取りでは、撮影は撮った時間、編集は編集した時間で数えられがちです。けれど、撮影の現場から編集へ持ち越された判断の時間は、どちらの欄にも書かれていません。もし撮影と編集を分ける仕事を組むことがあれば、その見えない時間を、最初から編集の側に積んでおく。今の私が言えるのは、そこまでです。

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