こんにちは。音楽プロデューサーの村脇優です。今回は山下智久さんの新曲You Make Meについての記事です。全編英語の歌詞にもトラックにも大注目の作品!
目次
時代を先取りしている件について語らせてくれ。
イントロは若き天才のオマージュか?
Shawn MendesのTreat You Betterをオマージュしているのか、イントロは非常に似ています。音色もまあまあ似ていますね。とはいえ、よくあるシンプルなリズムパターンですから、パクリだパクリだと騒ぐほどでもないでしょう。しかしながら、海の向こうの若き天才の楽曲を彷彿とさせるイントロを日本に持ち込んできたのは大賛成です。
ヒットを目的としていないリリースでは?
しかしながら日本において、全編英語では大ヒットさせることはできません。というかそもそも大ヒットを狙っているとは思えないんです。これだけ有名な人に歌わせるならもっと売れ線の楽曲の方が金になります。言うまでも有りませんが、お金の流れを考えた上で彼がどういう楽曲を歌うべきかは簡単に予想がつくと思います。そこに「音楽はビジネスじゃない」といった思想があれば別ですが。同意ことかと言うと、”この曲は何らかの力が働いて世に出されているのではないか“ということです。何らかの力というのは、山下智久さんの強い意思でこういった楽曲をやりたかったのか、業界のフィクサー的人間が日本の音楽シーンに一石を投じようとしたのか、定かではありませんが、そういったことです。
曲の構成に注目
サビに差し掛かると急に音が減り、リズムパターンが変化します。初めは静かな波打ち際のように穏やかだった雰囲気が次第に力強くなり、サビでは絶頂を迎えて進化します。「エモい」とはこう言うことをいうのではないでしょうか。暗い印象が明るい印象のコード進行へと変化。そこにある存在感の強いドラム。全体を纏め上げるベースの音。一つ一つの楽器(ドラムは一纏め)の旋律が非常に凝ってあるのがわかります。引き算に引き算を重ね、より少ない楽器でこれほどまでの表現をするのはとても凄いことなのです。ステマでは有りません。
惜しいのはケチ臭いところ
この動画、めっちゃショートサイズに削られていますよね。サビもフルでは聞けません。コメントも出来ませんし、高評価が多いのか低評価が多いのかも見られなくしてあります。非常にケチくさい。近年では割とフルサイズのMVを配信するのが主流になりつつある中で、この出し方をするということは、今いるファン層がこうでもしないと音源を買ってくれないということを示しているといえます。お金とシーンの開拓のバランスは非常に難しいということが見て取れます。しかし、この中途半端なやり方では結局はエモい曲に飛びつくエモい新規ファンを獲得することは出来ないでしょう。
この作曲者を選んだディレクターがすげぇ。
作曲者も凄いが、采配を振ったディレクターが凄い。
楽曲を制作する上で必要な人材が以下の通りです。
- 演者(今回は山下智久さん)
- 作曲者
- 作詞者
- 編曲者(アレンジャー)
- レコーディングエンジニア
- プロデューサー
ざっとこんなところです。他にも細かい役職の人間があと数人集まって仕事をします。これらの人員を選ぶのがディレクターです。全ての始まりがディレクターの采配次第といえます。最近では一人で何役もこなせる人が重宝されていますから、中田ヤスタカさんやヒャダインさんのように、作詞作曲編曲が全部できるプロデューサーを選んでしまうという手もありますが、今回はそうではないようです。
作曲者のAndreas Ohrnはスウェーデンの音楽グループGravitonasのメンバーか。
作詞は山下智久さん本人とWAKEという謎の人物が行った模様。作曲者は二人いるようです。そのうちの一人Andreas Ohrnさんはスウェーデンお電子音楽グループGrabitonas(グラビトナーズ)のメンバーの人が行った可能性が高いです。ネットでもっとも多くヒットするのが彼という理由からですが、彼らの楽曲とセンスが似ているというのがそれをもっとも確信に近づける理由です。
約4年前の楽曲ですので当時のトレンドの音色であるため比較が難しいかもしれませんが、メロディーだけを比べると似ている部分があります。特に明るい雰囲気のコード進行を暗いコード進行の中に散らばらせるところなんかがわかりやすいかと思います。
もう一人の作曲者Jimmy Claesonは他にもジャニーズに楽曲提供の経験ありか。
もう一人の人物は年とで検索しても多くヒットしません。ツタヤのサイトに関連項目としてジャニーズの画像が出てくるので、ジャニーズ事務所御用達の作曲者なのかもしれませんね。
今回の楽曲は彼らが作ったとすれば、つまり海外のアーティストが絡んでいるとすれば10年遅れの音楽をしている日本にとっては時代の先取り以外の何者でもないのです。そこには言語の壁があります。音節が多く子音は少ないというポピュラー音楽に不向きな言語を公用語として使っているこの国ではその壁を打ち砕くことが難しいようです。いつか壁が取り払われ、世界最高峰の音楽ランキングの常連になれる日がくるといいのですが。その中で、今回の楽曲You Make Meはかなり攻めてますね。(英語にしなければあの雰囲気が出せないという妥協点を飲み込みつつ)10年遅れの日本で海外と同じ時代の音楽をリリースしています。
技術の進歩が歌唱力を補う。
ネームバリューと容姿から山下智久さんを起用したのでしょうが、歌唱力に関しては問題大有りです。うまい!、日本を代表する歌手だ!とは決して言えません。ですが、それを感じさせない楽曲に仕上がっていますね。これは技術の進歩によって補われた歌唱力がトラックに乗っかっているからです。
ピッチ補正ソフトやレコーディン技術が時代とともに進化し、今では人工知能を応用したソフト(iZotope社Neutronなど)まであるほどです。その技をもってすれば歌唱力が足りなくても上手く聞こえるのですから、演者を選ぶ際に歌唱力のことをそれほど加味しなくてもよくなってきているのです。私もレコーディングとミックスの仕事をする際にそれを感じている人間の一人です。よっぽど悪いテイクでなければ補正できてしまいます。あとは素材数と編集力での勝負となります。
まとめ
さて今回は時代を先取りしたジャニーズ歌手のお話でしたとさ。楽しかったですか?ここまで読んでいただけたということは楽しかったということですよね?w
もしよければ他の記事もお読みいただけると嬉しいです。それではまた。
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