今回紹介するのは海外の短編アニメーション「DOUBLE KING」です。YouTubeを徘徊していたら偶然出くわしたこの作品。何回も見直してしまいました。見れば見るほどその魅力にひきづりこまれます。使われている音楽が非常に「いいおと」なのも注目すべきポイントです。私は魚の腹を杖で叩く音が好きです。
目次
あらすじ
主人公は謎の王様。手始めにネズミの王を殺す。ネズミの王冠を奪い、自らの王冠に重ねることで王冠が二つ。ダブルキングとなるのだ。そこからお話はスタートする。
次々と王を殺し、王冠を集めることに喜びを感じるダブルキング。あの手この手で色々な王をみつけては殺す。
ネズミの王の次はパンプキンの王。それからハエの王、蛇の王、魚の王。うまく王冠を手に入れられたり、手に入れられなかったりする。
そして大地の王、いや山の王と言うべきか。山の王を見つける。山の王の巨大な王冠を手に入れるため、山頂へと潜り込む。
ハエの王以来王冠を手にできておらず失敗続きのダブルきんは王冠とオウムの見分けがつかなくなってしまう。オウムを追いかけて迷い込んだ先には、同じパターンの植物が整然と並んでいた。
錯乱したダブルキングはハエの王を殺して手に入れた王冠がついた指を見て、それを手に入れようとする。自分の手を抑えて、指を切り落としてしまうのだ。
そして、ダブルキングは山の王の王冠の中で出血死する。
場面はしのぬるりと死の世界へと転換する。そこには、これまで殺してきた王と、死の世界の王がいる。死の世界の王はもちろん王冠を被っている。死の世界に来る際に落としてしまった二つ重ねの王冠がないことに気づいたダブルキングは、死に物狂いで(死んでいることに気づかず)死の世界の王の王冠に食らいつく。
死の世界の王はしつこいダブルキングに王冠を渡してしまう。
ダブルキングはついに無の世界へと飛び出してしまった。
具体的な考察
ダブルキングは人間
ダブルキングは人間の手足を持っている。しかも黒いワイシャツを中に着ているシーンがある。ダブルキング以外の王は動物や雲、山など人間ではないものだ。ダブルキングは人間の可能性が非常に高い。
蛇の王を殺したあとのシーン
崖から転がり落ちるシーンでダブルキングと同じような体をもつ生き物が、崖下の洞窟に住み着いている。彼らはおそらくダブルキングと同じ種族(人間)である。しかしながら、食べ物を洞窟で落ちてくるのを待っているだけの人間。ダブルキングとは違い、消極的な印象だ。
月の満ち欠け
この作品では新月から満月までの15〜16日間の様子を書いたものであることが、場面転換のシーンから推測できる。2週間でこれほど多くの王を殺すことができるのは人間だけと言うことなのであろうか。満月に乗せられて死の世界へと移動させられることから、月が満ちるに連れて死へのカウントダウンをいているようにも思える。
王冠=欲望を満たすもの
欲望が沸点に達した人間がダブルキング、平凡な人間が崖下の人間と言う視点で見ると、王冠が欲を満たすもを担っていることがわかる。人間の世界に置いて、欲望を満たすものとはやはり金であろう。登場する王冠は全て金色の設定であることからもそのことが伺える。
全体的な考察
ダブルキングは欲に満ちた人間への警告であると私は考察する。欲にまみれ、他を引きづりおろしてまでも金を求める人間を極端に描写している。ところどころ同種族(人間)が映るシーンからも、「そういった人とは距離を置いている方が安全だ」と言うメッセージも受け取れる。
ダブルキングも崖下の住民のような時代があったのだろう。自分の城の下に来る”王を失いし者”を拒絶するシーンがある。それはきっと自分の貧乏時代に大きなコンプレックスを抱えていることを暗示する行動だろう。
貧乏から抜け出すためにお金を求め、お金のためだけに人生を費やし、その欲から自我を失い命も軽々と落としてしまう。死の世界でも自分が死んだことよりも、お金への執着の方を優先し、無の世界へと旅立ってしまう。
私たち人間の行く先は「無」がある場所なのかもしれない。
纏め
いかがでしたでしょうか。何も考えずに見たら「不思議な作品」と言う感想になってしまいそうですね。それだけ考察の難しい作品です。しかし、この作品は世界中で再生され千万回をゆうに超える再生数を誇っています。皆、何かに気づいているのでしょう。これほど感情の奥底をくすぐられる何かの力を持っているアニメーションは世界中探してもなかなか見つからないのではないでしょうか。
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実は私村脇優と申しまして、ミュージシャンです。音楽プロデューサー兼シンガーソングライターです!そちらの活動も合わせてご覧いただけると弾けてしまうほど喜びます。こちらのリンクからご覧ください!→http://yumurawaki.com/